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会話での違和感、奇妙な幻覚を見たからか――そんなことで、昔の友人のあとをつけて家を確認するなんて、おかしなことだが。
しかし、彼女はこのとき無我夢中であとをつけた。
わたしの感想を交えると、このときBちゃんがあとをつけてたのは、A子さんにバレてたのではないか。そもそも尾行は素人ができるものではないし、あれは本来単独ではなく複数で行うものだ。そのため、単独でしかも素人の彼女は途中で気がつかれた可能性がある。
A子さんは、喫茶店から自宅まで歩いて四十分ぐらい。
普通ならバスか何か使えばいいものを、彼女は徒歩で帰った。自然、それを尾行するとなるとBちゃんも同じ手段になる。まさか、尾行が長距離でのものになるとは予想もしなかったが、それでもBちゃんは懸命に彼女のあとを追った。
A子の実家は、昔売れていたモダン建築だったようで、他にもいくつか実家と同じデザインがある。A子はその中の一つに歩いて行き、鍵を何度も確かめ、中に入った。
Bちゃんは回り込めば、そこから窓ガラス越しにリビングがのぞけるのでは。そう考え、彼女は回り込む。
リビングは白いカーテンがされていて、それが風でときおり、揺れ動く。
カーテンが邪魔だと、Bちゃんはイライラしたがすぐにカーテンは開かれたらしい。慌ててBちゃんはしゃがみ、塀に隠れる。ゆっくりと、顔を上げて塀からリビングを再びのぞいた。
そのとき、リビングのソファーには長い黒髪の女性が座っていた。それは、まるで人形のようにぐったりと寝かされている。他にも、床に倒れている中年の男性や女性。
それらを平然と素通りしているA子さん。
Bちゃんは、全身を冷たい血液が通っていくのが分かる。何だ、この光景はと。
そして、目が合った。
のぞいていたら、金髪のA子と目が合ってしまった。
Bちゃんは一目散に駆け出し、その場から逃げた。
4
「……確かに、妙な話だけど。でも、だからって偽物で確定なんて」
「翌日ね。A子の家、全焼したの」
「え?」
全焼。
家が焼けたらしい。家からは三人の遺体が見つかったとか。
「事件は事故として処理されたけどね。……ねぇ、これもあたしの考えすぎかな。偶然にしては出来すぎじゃないかな。こんなの、偶然でありえる。ありえることなの? ははっ、どうなんだろ。あたしには分からないよ。分からない。全然、分からない」
「Bちゃん」
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