平等な不平等

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 おかげさまと言ってはなんだが、私は今の職に就くことができた。それなりの知名度のコンサルティング会社だ。  この会社で業績を上げるにつれ、私はより多くの責任を負わなければならない立場になり、一人称が‘僕’から‘俺’へと変わり、そして現在に至る。今では立場と冷静さを表すために一人称は私になってしまった。  何はともあれ、大晦日であろうと私は仕事だ。苛立ちを鎮めることはできていないが、そのような理由で会社に遅刻するわけにもいかない。 「行ってきます」  私は自分以外の住人が誰一人いない住居に向かって諦めたように呟く。  当然、返事が返ってくると言うことは無い。  この生活に離れているのだが、私の口からは自然とため息が漏れてしまった。 「本日よりウチの会社は2週間の臨時休業とする。それぞれこれから渡す通達に従い、指定された病院にて診断を受けてきてほしい。『‘残りがどれだけ’なのか把握をしなさい』と政府の方から通達がやってきた。もちろん休業期間は全社員有給とする」  社長が二百人ほどの全社員に対して休業の知らせをしたのは、私がニュースを目にした数日後、1月3日のことだった。  一部の社員は納得できない様子をしており、その中の一人の女性社員が「必ずしなければならない。と言うわけでは無いんですよね」と社長に問いた。     
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