平等な不平等

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 社長は彼女に対して首を横に振り、「絶対に行ってこい」と答えた。  私もくだらない妄言のせいで健康診断に行かなければならなくなってしまった。 _____________ 「茅野(かやの)雄二(ゆうじ)さーん。中待合にお越しください」  病院の待合で座り心地の悪い粗悪な椅子に背中を預けて自分の番を待っていると、診察室の目の前である中待合にやってくるように呼ばれた。自分の番が迫っているということだ。  私は手にしていた文庫本にしおりを挟み、名残惜しさなど微塵も感じさせない椅子に別れを告げた。  中待合には『生活習慣病に注意!!』『献血にご協力ください』といった綺麗事が羅列された広告ポスターが隙間の無いほど壁に貼られており、半ば善意のインフレが起きていた。  どれだけ綺麗事を書き連ねたものであろうと、どれだけ正しい事実を主張したものであろうと、乱雑にそれらが提示されるようでは善意や正義などは価値を見出されることはない。  ただ、意味を持たない文字列という存在にしかなりえないのだ… …などと、特に深い意味など無いストレートな主張をするポスター達を見ながら考えていると、すぐに私の番はやってきた。     
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