平等な不平等

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 スライド式の扉を開けて診察室の中に入ると、仙人のように真っ白なヒゲを伸ばした老人の医師がパソコンと向かい合いながら座っていた。 「あぁ。茅野さんですね」  そう言いながら、医師は私に一枚の紙切れを渡す。 「単刀直入に言いますね。診断の結果、茅野さんの残り活動可能時間は1280時間です。1日8時間の睡眠をとることを前提として、余命が2ヶ月半ということになります」  確かに、医師から渡された診断書には『余命:1280時間(仮)』と書かれていた。(仮)の意味は特に無いらしく、断言することはできないために記載しているのだそうな。  ただ、私の余命が残りわずかである事実は変わらないらしい。酷く重い現実が現実味を持つことなく私にのしかかってきた。  呆然と渡された資料を見つめる私に向かい、医師は言葉を放つ。 「ただ、事前のアンケートなどによると、茅野さんは平均して3時間4時間程度しか睡眠を取らないそうですね。もし今後も睡眠時間が変わらないようでしたら、あなたの余命は2ヶ月になります」 「2ヶ月よりも短くなることは無いんですか?」 「無いわけではありません。ただ、人間は最低限睡眠を取らないとまともに生きていけない生き物なのです。その事実を踏まえると、あなたの寿命は2ヶ月より短くなることなどは無いと思いますよ」 「はぁ…」     
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