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翌朝、楓貴が、着替えるために一度母屋に戻ろうとしていると、リビングに聖が現れた。 「あのひとは?」 聖は、まだ市敬をなんて呼んでいいのかわからないようだ。 「イチはまだ寝てる…念のため、今日はもう一日仕事を休むようにしてあるから」 そう答えると、少し困ったような顔になる。 「何かあるのか?俺でいいなら、聞くけど」 「いや、その…あのひとと、あんたにも聞いてて欲しかったんだけど」 「イチは寝起き悪いけど、起こしてこようか?」 思わずそう口を滑らせて、しまった、これじゃあいつもの寝起きをよく知ってると暴露しているようなものだ、と内心焦ったが。 聖はそのへんはあまり気にしなかったようだ。 自身の言いたいことのほうに気を取られていたのかもしれない。 「もうそろそろ、学校休んで二週間ぐらいになるから、一回家に帰りたいんだけど」 少し言いにくそうに、そう切り出した。 ああ、もうそんなになるか。 楓貴は、うっかりしていたな、と思う。 そういえば、学校からかかってくる定期連絡でも、先生から登校を催促するようなニュアンスが増えてきていたような。 聖の複雑な家庭環境では、あんまり休ませていると虐待だのなんだのを疑われかねない。 昨今はそういう問題に学校でも敏感だ。 「待ってろ、今イチを起こしてくるから」
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