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「なんか困ったことがあったら、俺かこいつに連絡しろ。あと、お前にはもう二人叔父がいる…そいつらのほうがお前の家の近くに住んでるから、一応後で連絡先教えとく。緊急時はそいつらに連絡してもいい」
一人でなんでも背負いこまなくていいから。
「それで、いいか?」
お前の生きたいように生きられるか?
市敬は、中学一年生の息子を、一人前の大人として扱うことに決めたようだ。
もちろん、手助けはするけれども。
「大人の力が必要なときは遠慮なく言え。中身がどんなに大人でも、日本の法律では年齢の壁は越えられないことがあるからな」
そして、市敬は、最後に聖をその鋭い眼光で真っ直ぐに見据えて言った。
「南美を待つのがしんどくなったら、いつでもここに戻ってこい。お前の家はここにもある」
聖は、二週間前とは違い、その視線を真っ向から受け止めて、そして。
「あのさ、休みの日には、またツーリング行きたい、とか言ってもいい?」
少しはにかんだように、そう訊いた。
「たりめぇだろ、いつでも言え」
ぶっきらぼうに、市敬は答えたけれども。
フイ、と顔を背けたのは、たぶん照れているからだ。
「ふう、そーゆーことだ、後はテキトーにやっとけ」
暴君は、もう一度寝るらしい。
方針だけ告げたら、後は全部楓貴に任せて、怠そうに寝室へと戻っていく。
「つーかさ、あんたも大変だね、あのひとの側にいるの」
聖は少しだけ同情するような顔で、彼の叔父を見る。
そして、クスリと笑った。
「俺も同じか…母さんも大概メンドクサイもんな」
俺の両親、なんつーか、どっちも性格が壊滅的なんだけど、俺、大丈夫なんかな。
「俺の甥っ子だから、たぶん、大丈夫だろ」
楓貴も苦笑して、そう言った。
その頭を、ポン、と撫でる。
「今日は俺も会社休みだな…お前を家まで送って行って、携帯を買ってやったり、学校に挨拶に行ったり、いろいろ環境を整えないと」
まずは、お前のその髪型をなんとかしてやらないと。
ボサボサすぎるだろ。
せっかくイチに似てる顔が台無しだ。
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