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ひとり万歳!早く桜の花を塗らねば。私は下書きやアイデアスケッチは得意なんだけど最後まで完成させるのが苦手なのよね。つまり飽きっぽいんだよな。あーでももうちょっとがんばれ!私。たぶんクラスのみんなは私が心の中でこんなことを考えてるんなんて誰一人気付かんだろうなぁ。
「木の枝が上手です」
は?今誰か喋った?え?私の心の声でもないぞ。
「桜ってこんな風にも描けるんだ」
声の主はなんと辻谷くんではないか。
私が一人思い耽っている内に、彼はいつのまにか私の目の前にいた。いつのまにこんなに近くにきたんだろう。さっきまで、遠くの方で他の男子と楽しそうにふざけあっていたのに。ワープしてきたみたいだ。
私はこの急な展開(突然の辻谷くんの問いかけ)に驚いていた。
なんか言わなくちゃ、あーでも好きな人の前だと緊張してなんにも言葉が出てこない。
「この木の枝は、少し色塗りを失敗しちゃったんだ」
あー私ってば、せっかく褒めてくれてるのに自分でけなしてどーする。これだから、人間関係がうまくいかないんだよ。褒めてくれてるんだから素直にありがとうっていえばいいじゃない。
「そーかな。僕はこの枝の感じがすごく好きだな。なんか素直に生きてる感じがする」
「ほっ、ほんと?」
「水本さんも、もっと素直に生きようよ!授業中いつも緊張してるみたいだけど。みんなじゃがいもやたまねぎだと思えばいいよ。なんちって、偉そうな事いえないけどさ…」
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