第2幕:いなくなれ、群青

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 俺がそう言うと、長い綺麗な黒髪を後ろで束ねたその少女は、鼻が詰まったような少しくぐもった声で、「その節は」と言って小さく頭を下げてきた。  改めて思ったけれど、わずかに目尻が下がって垂れ目気味だからなのか、それとも、左の目尻にホクロがあるからなのかはわからないけれど、ものすごく大人っぽく見えた。妙に劣情を煽ってくる少女だと思った。 「ではまた」  そう言い残し、少女は昨日いた男の子二人と一緒にその場を去っていった。 「あんな子いたっけ?」  すぐ後ろに並んでいた野球部の後輩が少女の後ろ姿を見ながら不思議そうに言う。 「いや、なんか昨日からこっちに遊びに来たっぽい」 「へぇ。てか、なんでそんなこと知ってんの?」 「偶然神社で会ったんだよ」 「なんでまた神社なんかに」  さすがに素直に答えることはできなかった。なにせ、ここで素直に答えてしまえば俺は自分がストーカーまがいのことをしていたのだと堂々と宣言してしまうことになるわけだ。  だから俺は誤魔化して答えた。誤魔化したと言うよりは、嘘をついた。 「カブトムシを捕りに行った」  年相応のありえなくもない話ではないかと思った  後輩は俺を疑うような目で見た後、「まぁいいや」と言って無理やり納得してくれた。 「それよりも、今日は部活に遊びに来る?」     
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