プロローグ

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 あぁ。けれど、俺は後悔に苦しめられて何も忘れられずにいるくせに、一番忘れてはいけないものを忘れてしまっている。いや、忘れるも何も、そもそも知らなかった。  たった一夏のわずかな時間を過ごしただけで、俺の思い出にいつまでも居据わり続ける図々しいあの少女の名前。  それが、俺の記憶にはない。  完全に知らないのだといえば語弊がある。  俺はあの少女のことを名前ではなく、ニックネームで呼んでいた。  あの少女の周りの人間を真似て、あの少女をニックネームで呼んでいた。  けれどやっぱり、俺はあの少女のニックネームしか知らなかったわけで、ニックネームよりも先に知るべきであろう名前を知らない。  だから、俺の記憶にはあの少女の名前が全くない。     
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