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「ふふ。ありがとうございます」
嬉しそうに笑う少女を見て、俺は思わず目を逸らしてしまった。
「君も敬語じゃなくていいよ」
「いえ。私はこの話し方が通常ですので」
そうなんだと俺は言葉を返したけれど、心の奥底では壁のようなものを感じてしまった。
「朝はいつも早いんですか?」
「いや、今日はラジオ体操の当番があったから早く起きただけ」
「じゃあ偶然という事だったのですね」
だからそう言っているだろうと言いたかったけれど、彼女に対してそういったキツい当たりをしてしまう事に後ろめたさを感じてしまって、俺は言葉をぐっとのみ込んだ。
「君はいつも早起きなの?」
そう聞くと、少しだけほおを赤らめて彼女は目を伏せた。
「いえ…その。朝は苦手なんです」
恥ずかしさを殺して上目遣いでこちらを見てくる少女を俺はやっぱり直視できなかった。
「姉ちゃん寝起きはすごいんだぜ」
つり目の方の少年が言った。
「お前は一生見れないけどな」
眉が薄い方の少年が言った。
「和志!彰人!」
ほおを膨らませながら少し怒った様子で少女は二人の名前を呼んだ。二人は逃げるように家の中に入っていった。
「あはは」
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