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なんて苦笑いをしながら俺はその様子を見ていた。本当に仲のいい姉弟なんだなと思った。
それから少しの間。俺は彼女と世間話をした。
本当に他愛のないただの世間話だった。
歯が浮くような会話をした。思ってもいない事を言ってしまった。
本心ではなく、彼女との時間を繋ぐために俺は言葉を紡いだ。
けれど、そんな時間が驚くほど心地よかった。
どれくらいそんな経ったのかはわからない。
でも、あまり長い時間ではなかったのは確かだ。
そして、心地のいい俺と彼女の時間はすぐに終わりを迎えた。
「けーちゃん。ご飯できたよー」
しいたけ婆ちゃんの声が聞こえた。
「姉ちゃん早く!早く来ないと彰人が姉ちゃんの分の目玉焼き食べちゃうよー」
そう言いながら、つり目の方の少年が玄関の網戸を開けて顔をのぞかせた。
なるほど。彼が和志なのか。
少女は和志の方を振り向き、「すぐ行きます」と言って今一度こちらをみた。
「私、もう行きますね」
「ああ」
「またお話ししましょうね」
両の手のひらを軽く合わせ、少女は言った。
「ああ。またな」
俺はそう返しながら小さく手を振った。少女は俺のそんな様子を見て少し驚いた顔をした後、昨日のような大人びた様子で微笑むと、俺の真似をして小さく手を振り返してくれた。
「ではまた」
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