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ついさっきのラジオ体操の時と同じ言葉を置き去りに、彼女は今度こそ踵を返して家の中に入っていった。
空は青く澄み渡っていて、飛行機雲が二本、水を差すように伸びていた。
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「凌くん。今日こそは部活に来るでしょ」
以前よりも来てくれという懇願の色を強くして後輩のシゲが言ったのは三日後の事だった。
この日も俺はラジオ体操当番で会館に来ていて、並ぶ人々のスタンプカードにスタンプを押していた。
「いや、今日も行かない」
「なんで」
「面倒だから」
「そんな「他の人も並んでるから横にズレろよ」」
納得していないといった様子のシゲの言葉に言葉をかぶせる。
別にこいつを面倒だと思ったわけではなく、単純に作業の邪魔だったから退いて欲しかっただけだった。
「…わかったけど」
渋々といった様子でシゲは列からズレる。
スタンプ待ちの列は再び動き出した。
「でも、一回ぐらい来てくれてもいいじゃん。他の人たちはみんな来てるよ」
次から次へと差し出されるスタンプカードに黙々とスタンプを押す俺に、シゲは尚も説得のようなものを続けてくる。
「みんなはよっぽど野球がやりたいんだな」
「っ……だとしても!顔出すぐらいしてよ」
「俺は野球なんかやりたくないんだよ」
「それは……」
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