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ここまで言うと流石のシゲも無理だと思ったのか、「じゃあ気が向いたらでいいから」と言って帰っていった。まぁ、帰っていったと言っても二時間後には学校のグラウンドでアップのランニングを始めているはずだ。
寂しそうに去っていくシゲの背中を見送っていると、「おい!」と声がかけられた。
ここ数日の間、何度となく聞いた声だった。
「おいじゃねぇだろ和志」
「なんで俺の名前知ってんだよ気持ち悪いな!早くスタンプ押せよ!」
なんて言いながら、つり目をもっと釣り上げて和志はスタンプカードを差し出してきた。こいつの性格から考えて、スタンプカードを投げつけてきてもおかしくはないのだが、姉の手前でそんなことはできないのだろう。
「なんでお前の名前知ってるかって、そりゃあここ数日でお前の名前を何度も聞いてるからさすがに覚えるだろ」
受け取ったカードにスタンプを押し、そのまま返す。
「うわっ、それで覚えるのかよ気持ち悪いな。でも残念でしたー」
和志は偉そうに胸を張ってみせる。
「何が残念なんだ」
「おれは和志じゃなくて彰人の方でーす」
あっかんべーとやりながら、得意げに自称彰人の和志が言う。
「いや、ダウトだね。お前は目尻がつりあがってるから和志だ。彰人はそっちだ。眉毛が薄い」
「そこまで見てんのかよ。本格的にきもちわるいな」
そう言いながら彰人がカードを差し出してくる。
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