第2幕:いなくなれ、群青

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「ありがとう」  そう言うと、逸らした視線の先で和志と彰人がニヤニヤと笑っていた。 「じゃあ私のことは?」  と、彼女がずっと聞きたかった名前を名乗ろうとした時、しいたけ婆ちゃんが「けーちゃーん」と彼女を呼んだ。彼女はハッとした様子で家の方を見ると「すぐ行きまーす」と返した。 「じゃあ、俺も婆ちゃんに習ってけーちゃんって呼ぶよ」  俺の言葉を聞き、彼女は…けーちゃんは両目を見開いた後、「はい。それでお願いします」と微笑んだ。  俺はやっぱり、そんな彼女の顔をまっすぐに見ることができなかった。  歩き去る彼女の背を見ていると、和志が俺の肩を叩いて「顔赤くなってるぜ」と言った。 「やかましいわ」 「姉ちゃん。今は彼氏いないぞ」  その言葉を和志がどういった意味で言ったのかは俺にはわからなかった。 「まぁ、お前には無理だけどな」  彰人が俺のもう片方の肩を叩きながらいった。  前言撤回だ。こいつらは最初から俺をからかうつもりで言っただけだったようだ。  そのすぐ後、彰人が呼ばれて家の中に入っていった。 「ところでさ、結局なんのスポーツやってんの?」  思い出したとでも言うように、和志が言った。     
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