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一番上にあるプリントを見ると、‘あの’神社で開催される夏祭りの運営についての案内だった。しらのが巫女舞を踊る祭りだ。
「まさか…」
「お前祭りの運営やれよ。どうせ暇だろ」
珍しくわかりやすく笑顔になった一輝の顔を見て俺は固まった。
「嘘だろ…」
「マジマジ。先生に誰かいい人いないかと言われたから凌がやってくれるはずだと答えといたぜ」
「お前ふざけんなよ……」
いいじゃねぇかよ暇人という嫌味に反論できるほど俺は充実している人間ではなかった。渋々「わかったよ」というと、一輝は「俺も雪乃もいるから心配すんな」と言った。そういう問題ではないだろと思った。
「つーかさ」
何か聞きたいことがあったようで、思い出したように一輝が口を開いた。けれど、言葉の出だしを口にしただけでそこから一輝は黙り込んでしまった。
「どうしたんだよ」
心配になって聞いてみても、一輝は「あぁ。いや」と上辺だけの返答をしてきてそこから先を語ろうとしない。しばらくそんなやりとりが続いた後、「やっぱりいいや」と、もう帰るからと一輝は言った。
ちょうどその頃合いでけーちゃんが俺たちを呼び、俺は一輝にまたなと言って家の中に入っていった。最後に一輝が「へぇ。なるほどね」なんて言っていたけれど、その言葉がどういう意味合いだったのかなんてもう誰も知る術がない。
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