第1幕:また、同じ夢を見ていた

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 アイツに初めて会ったのも同じ季節、中学3年の時の夏。いつもと変わらず、扇風機だけで乗り切るには苦しいほどに暑い夏のことだった。 __________  夏休みが始まってすぐの日曜日。  野球部だった俺の夏は終わりを迎えた。  中体連と呼ばれる大会の予選3回戦での敗退だった。  万年初戦敗退校と言われていた俺たちにしては頑張った結果だと思う。きっと、3回戦の相手が前年優勝校でなければもっとそれなりの順位まで上がれたのだろう。けれど、俺は充分に満足していた。  後悔がないのかと言われれば、別に後悔がないわけではない。ただ、辞めるにはいい機会だと思った。  俺と同じ三年生は皆、高校に入ってからも野球をやるといい、体が怠けないように夏休み期間中も自主的に部活に参加すると語っていた。けれど、部活だけでなく、野球自体を引退すると決断した俺はそんな面倒なことはしない。  こうして俺は、受験勉強ぐらいしかやることのない夏休みに突入した。  俺の地元が特殊なのか、夏休みの中学生にはラジオ体操当番というものすごく面倒くさい役割が課される。  昨年と一昨年の2年間は週に2度、朝の6時に起きて6時半からのラジオ体操当番のために地域の会館へ行き、そのあとの7時半から夕方の5時までは部活で汗を流していた。     
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