第1幕:また、同じ夢を見ていた

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 けれど、今年は違う。もう部活がないのだから、週に2度だけラジオ体操当番に出向きさえすればあとは好きに時間を使える。なんと素晴らしいことか。  と、自由な夏休みライフに心を弾ませていたのだが、思いの外、自由な時間が多いというのはつまらないものだった。  部活を引退し、本当の夏休みが始まって五日目、俺は既にやることがなくなってしまっていた。  夏休み用に渡された問題集は夏休み前から手をつけていて、もう既に終わらせてしまっている。  自由研究は毎日聞いているラジオ英会話の書き写しだから日々にできることは限られている。  受験勉強をすれば良いのかもしれないが、志望校は俺の学力よりもはるかに程度が低く、そもそも勉強の必要がない。  じゃあゲームをやればいいと思うかもしれないが、ゲームはむしろやりすぎて飽きが回ってきたところだった。この時期、テレビはろくな番組がやっていないし、本などは読む気にすらなれない。  望んでいたはずの暇な夏休みは苦痛を詰め込まれただけの面白みのない時間だった。いつも遊んでいる人間は同じ部活動の人間ばかりで、あいつらは今日も元気に飽きることなく炎天下で走り回っている。 「はぁ…。暇だな」  そう呟くと、自分がつまらない状況にいることがよりいっそう身にしみた。そして、俺がこぼした独り言を耳ざとく拾った母が、     
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