第1幕:また、同じ夢を見ていた

5/14
前へ
/65ページ
次へ
「暇ならさ、この封筒を爺ちゃんのとこの向かいにあるポストに入れてきてよ」  そんなおつかいを言い渡してきた。  仕方なしに封筒を受け取り、俺は祖父が経営する床屋の向かい側にある郵便局へと向かった。  家の勝手口を出るとすぐの位置に細い道路があり、その道路は突き当たりで垂直の角度で別の細い道路と交わっている。  その交わっている道路を真っ直ぐ北に3分ほど歩くと、勝手口の目の前にある細い道路と平行の位置に国道があり、その国道沿いの、家から見れば国道の向こう側に祖父の経営する床屋と祖母の経営する美容室が並ぶように建っている。  俺はいつも通りに突っ掛けを履いて勝手口から道路に出た。  時刻はもう昼を回っていて、太陽は空のほぼ真南の位置で忌々しいことに熱と紫外線をばら撒いている。  暑いし眩しいしで鬱陶しいのだが、そんな太陽がなければ俺たちの暮らすこの世界は成り立たない。  今日はいつも通りに暑い日で、ニュース番組のお天気コーナが言うには最高で37度になるそうだ。その数値を聞くと体感温度が実際よりも高く感じられた。けれど、風が吹いているだけ幾分か過ごし易い。  ほんの少しの道のりを鼻歌まじりに歩くと、近所の家々の田んぼや畑に人気がないことに気がついた。昼時だからおかしな話ではない。     
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加