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今日の脳内には正論を吐く僕、ダラダラする僕、暴れる僕、三角座りで一点を見つめる僕、奇声を出している僕、瞑想する僕がいる。 ああ、働き盛りの僕がいない。呼び戻さなければ。 インターホンを押して、僕が僕を呼ぶ。 働き盛りの僕は目を擦りながら奥の方から歩いてくる。 さすがに疲れているか。でもごめん、今日も君を頼ることになる。 小さい僕たちが僕に文句を言う。 そんなに文句を言うなら、君たちが働いてくれれば僕は楽なのに。 僕自身をコントロールするのも大変だというのに、他人をコントロールしなければならない上司は大変だ。 少しだけ溜息をつくと、僕は目を覚ました。 頭の中で午後からのタスクを整理する。 これもやらなければ、あれもやらなければ、と移ろう僕を一旦落ち着かせるためには必要な作業だ。 脳内で整理した作業を指先、キーボードを通して、画面上に吐き出す。 こうしないと、頭の中に文字が渦巻き、作業にならなくなってしまう。 今にも吐き出したいが、まだ10分残っている。 もう少し後に整理すればよかった。 話題はいつの間にかまた明るい話に移った。 今日は随分と情緒不安定な空間だ。 高速道路で鹿に遭遇したことがあるかないか。 こんな些細な事で楽しい空気になるのに、人間はマイナスのことを話したくなるのだろう。 やはり、悲しみを分かち合いたいからだろうか。 楽しいことが二倍になるのであれば、楽しいことを膨張させて脳内を埋めた方がいいのでは、と思う。 ただ、そんなに楽しいことも起きないよなあ、とジレンマに陥る。 子供がいる先輩方を見ると、大変そう、という気持ちが強い。 子供や奥さんと話している時間は実は幸せなのだろうけども、その分失うものが多そうに見える。 そういえば、彼女がいない、というだけであった肩書が知らないうちに、独身に変わっていた。 グラデーションのように変わればいいのに、0から1へ随分と極端だ。 学生から社会人に急には変われない、と学生のような言い訳を社会人の僕が呟く。 後ろ向きな僕と自意識過剰な僕には大人になってほしい。 もっと年を取ったら恐らく君たちは僕の中からいなくなる。 君たちには長らくお世話になった。でも、君たちがいる限り人生を損していると思う。 それならばできるだけ早くいなくなってほしいというのが、僕の願いだ。 そう考えれば考えるほど、君たちは僕に強くしがみつく。
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