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車、先輩、遊園地に続き、登山の話になった。 頂上に着いて下りる途中に、上っているときにはなかった糞が道に落ちていたらしい。 なんとも恐ろしい話だ。 このような話であれば、僕も取り繕うことなく、驚きの表情を見せることができる。 どこかの芸人が言っていたどうして下るのにわざわざ上るのか、という価値観を思い出す。 これを口に出したら、どれだけ顰蹙を買うだろう。 むしろ、特殊な価値観として笑いに変えられるだろうか。 自信がないので黙っていることにした。 しかし、車、遊園地、登山。 僕の中では絶対に起こりえない連想ゲームだ。 僕の倍以上の年齢で、僕の数十倍の経験値を蓄えているような気がする。 僕がこの人たちと同じ年齢になったとき、同じくらいの情報量を持っているのだろうか。 いや、持っていよう、と強く決意するのが若者の在り方なのかもしれない。 会話に区切りがつき、無言の時間になる。 皆、せっせと食べ物を口の中に運び、目を合わせない。 僕も、空になりかけの野菜ジュースを、音が鳴らないように飲み込む。 僕はいつもこの空気になると、笑いを堪える。 どうして大の大人が数人集まって、このような空白の時間ができるのだろう。 話題を探すように、一時の場を凌ぐために、んーそうかー、と前の会話の余韻を引きずっている人もいる。 僕と一番年齢が近い先輩は、スマートフォンを操作している。 こういうのを嫌がる人はこの中にはいないのだろうか。
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