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残っているもう一切れのサンドイッチをつまんだ。 まだ時間は30分以上残っている。 少しペース配分を間違えたかもしれない。 野菜ジュースを先に飲み干してしまったのも僕の采配ミスだ。 周りの人の食べ物を見比べてみると、皆早くも食べ終わっている。 しかし、こんな小さな弁当で満足なのだろうか。 昼食の大きさと体の大きさが比例しない人が3人くらいいる。 僕がそのうちの一人に入ってしまっているのが、どうも気恥ずかしい。 歯の裏にくっついたサンドイッチの生地を舌で取り除いた。 僕も、職場に入って当初は米を炊いて、冷凍食品と一緒にタッパーに入れていた。 やめたのは事前に朝に米を研いでおくのが面倒になったからだが、 毎日コンビニに寄って、レジに物を運んで、小銭を渡して、という流れを考えると、 そこまで変わらない気がする。 「来週から結構人いないね」 テーブルのすぐ近くにあるホワイトボードを見て部長が呟く。 膠着状態が終わった。 ホワイトボードを見ると、確かに、半分くらい東京に出張に行くようだ。 中には週に2回日帰りで東京に行く人もいる。 帰ってきたら家族がいて、この人はいつ休むんだろうか。 「東京で〇〇さんに会うんです」 かつてこの職場にいた人の名前が出てくる。 長らくこの会社に勤めている人の中では通じる名前のようだが、新参者の僕には当然話の内容は理解できない。 そして、その人の思い出話になる。 恐らく、その人を知っていれば面白いんだろうなと思えるのであろう話。 取り繕った笑顔を向ける。ちゃんと笑っているように見えただろうか。 恐らく口元は笑っていても目が笑えていない。 笑いをコントロールできるようになれば、僕はまた社会人として一歩踏み出せるのだと思う。 こういう会話の度に、無理して会話する必要もないじゃないか、と思ってしまう。 お互いに仮面を被った状態で会話をして、意味があるのだろうか、だが恐らく、たとえ建前であっても、会話することが必要なのが社会というものなのだろう。 社会という、実体のない言葉に責任を押し付けるのも社会人としての第一歩だと思う。 2、3人が楽しそうに笑う。 こういう知り合いが増えれば増えるほど、飲み会を楽しく思えるようになるのかな、と期待している。 話したいことを好きなだけ話せる相手というのは、貴重だろう。 建前で話す相手が増えるならば尚更だ。
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