初恋ものがたり。

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「……お嬢様、早く帰らないと旦那様に叱られますよ」 私も学校に行ってみたいわ、と突然言い出した月曜日。彼女を溺愛(できあい)する父親は、はじめは反対したものの、火曜日にはもう折れた。水曜日に手続きして、木曜日に入学。お嬢様のお付きとして、僕も一緒に学校に通うことになった。 そして、金曜日。 迎えの運転手を巻いて、彼女は街を散策していた。きっと、運転手は半狂乱で僕たちを探しているだろう。 「少しぐらい、いいじゃない」 無邪気に笑って、ホットドッグをぱくりと食べる。資産家の令嬢として、なに不自由なく育った彼女。お目付役のミス・ブラウン不在のいま、従者ひとりを連れた気軽な外出を存分に楽しんでいるようだ。 「……付いてますよ」 口元のケチャップを、親指の腹で(ぬぐ)ってペロリと()める。 安っぽい味だ。
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