初恋ものがたり。

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普段彼女が口にしているのは、もっと上等で美味しいもののはずだ。珍しいとは言え、そんなに夢中になる味ではない。 「な、な、な」 ふと見れば、顔を真っ赤にして、彼女がわなわなと震えている。耳朶(じだ)まで赤い。 “温室育ちの世間知らず”には、ずいぶん刺激的だったようだ。両手から滑り落ちたホットドッグが、地面にべチャリと横たわった。 あ……。 そろりと盗み見れば、サラの目にみるみる涙の粒が盛りあがった。(あふ)れた涙の(しずく)は、次から次へと頬の上を転がるように落ちていく。 「お嬢様っ!? そんなにお腹がすいてたんですか!?」 すぐに新しいのを買ってきますからっ! と言って駆け出そうとした僕の上着の(すそ)を、彼女がグイっと引っ張った。
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