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怪訝な顔をして振り向けば、サラはうなじまで朱色に染めている。そして、普段の彼女からは想像もできないような、消え入りそうな声でつぶやいたのだった。
「……あなたが、はじめて私にくれたものだから、うれしかったのよ」
予想だにできない台詞に、今度は僕が言葉に窮する。
……ああ、困った。
かじかんだ手をポケットに滑りこませれば、ひんやりとした鉄の感触。
デリンジャー。
大統領暗殺に用いられた小型銃だ。
──Died on Saturday,(土曜日に死んで)Buried on Sunday.(日曜日には埋められて)
伝承童謡のワンフレーズが頭をよぎる。
「This is the end……(これでおしまい……)」
思わず口ずさめば、サラが弾かれたように顔を上げる。その大きな瞳は当惑に揺れていた。
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