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──資産家の令嬢を殺すこと。
それがボスから与えられたミッションだった。
理由なんて知らない。知ったところで、どうしようもないのだ。それが、僕が生きてきた世界の暗黙のルールなのだから。
親しくなって、殺して、また別の場所へ。
その繰り返し。
「……なにが、おしまいなの?」
尋ねた声は、わずかに震えていた。それに気づかないふりをして、僕はニッコリと笑みを浮かべる。
「……“寄り道”ですよ。これ以上帰るのが遅くなると、旦那様に叱られてしまいますよ」
悪戯っぽく片目を閉じれば、サラがどぎまぎしながら「そうね」と答えた。
……おかしい。
甘酸っぱい空気をかき消すように、僕はかぶりを振った。
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