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目が覚めると私は、新しい私へと生まれ変わっていた。
それは人間と呼ぶには些か奇妙な、いや、だいぶ気持ち悪く奇怪で悍ましく、だけど神秘的ですらある形をしている。
私は確かに人間として生きている。
新しい形をした人間として生まれ変わった。
今私は、液体の中に浮いている。いくつもの管に繋がれて、私は母親の体内に戻ったかのように、柔らかな液体の感触に包まれている。
不格好だった腕や脚は無く、煩わしかった性器も捨てた。顔面を取り繕っていた全ても捨て、朽ちていくしかない臓器たちも捨てた。今の私は心臓すら持っていない。
ただ、脳だけで生きている。
肉体を捨て、脳だけが私を作る。新しい私を。
こんなに幸福なことがあるだろうか。
目覚めた私は泣いていた。嬉しくて涙を流していた。
喜びに脳は震えて、繋がれた管たちもそれに共鳴する。
だけど私から涙は流れない。脳は涙を流さない。手を上げて喜ぶこともない。ただその感動に震えて、感情という信号を、繋がれた機械へと送る。
――成功だ!私は新しい人間として生まれ変わった!
薄暗い室内で、私の下に置かれたパソコンの画面だけが青白く光り、そこに無機質な言葉を映し出す。
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