ダイダイ色の街

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「今日仕事するの?」夫は不意に愛梨の肩に触れた。「市来君に台湾の街の絵の仕事頼まれたから忘れないうちにスケッチだけでも済ませようかなって思ってるよ…」「そうか…市来とグループラインしてたよな?それで連絡し合えば良いよ…あいつ日本の雑誌にもちょくちょく台湾のコラムやらエッセイやら書いてるからお前の絵使ってもらえば金になれるかもしれないな…」  ベロベロべー!もうとっくに連絡しましたー。私の仕事に…私の絵に興味無いのにお金になりそうな時だけ意見してくるの本当ムカツク…芸術的感性無しヤロー。愛梨は心の中で夫に悪態をついた。 昔は声にしていたが…いくら喧嘩をふっかけて愛梨の職業であるイラストレーター…絵をかいて表現する事の魅力を説いても…現実あまり売れて無い愛梨はちっともお金になっていない現実を指摘されて、ひたすら悔しい思いをする…っておちのヌカニクギ討論はしても無駄… そしていつしかしなくなっていた。 娘の勉強机の隣に簡単な愛梨の仕事机がある。 スケッチブックと鉛筆を出した。愛梨は撮りためたスマホの写真を眺めて自分の描きたい風景を探す… 普段取材を兼ねた旅行のときはスケッチブックを持ち歩くのだが娘中心の家族旅行に努めたかったからスケッチブックも仕事も置いてきた。台湾にはとにかくお母さんとして娘と楽しみたかった…。 「奥さんイラストレーターなんですよね?児童書の挿絵なんかもなさっているって聞きました。」夫が娘とホテルのチェックインをしている時に市来君は愛梨の目をみて話しかけた。 「そうです…なかなか売れて無いですよ…恥ずかしいですが…主婦のお小遣い稼ぎの収入だから…プロのイラストレーターって名乗るのはおこがましいかな。」愛梨は自身の無い下目使いでモジモジした。
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