12人が本棚に入れています
本棚に追加
流れた涙も抱きしめられた感覚も夢のようであり以前も感じた感覚のようにも思えて愛梨は不思議なドキドキ感で市来君と車に乗った。
「この前先輩と飲んだ時…もしかして愛梨さんも来てくれるかな…って期待してたんですよ…バカですよね…娘さんお留守番させる年じゃ無いのに。」市来君の車は市来君の匂いがした。去年は芳香剤の匂いが強くてわからなかったけど…市来君の匂いが心地よくて優しかった。台湾の空気と混ざって愛梨の身体を包み込んだ。
台北中山にある飲茶のレストランは小綺麗な2階建ての店だった。13時をまわっているのに店はほぼ満席で、小綺麗な客達は行儀良く食事を楽しんでいる。「ゆっくりお散歩出来た?早く迎えに来すぎちゃったかな…」
愛梨は首を振った。テーブルには美味しそうな料理が並び、機内食以外口にして無かった愛梨のお腹はぐるぐる鳴り響いた。「ゴメンゴメンお腹空いたね早く食べよう。」笑いながら市来君は箸をとった。料理はどれも上品に美味しくて箸も笑顔もとまらない。「この前はお母さんだったからかなー。良くわからなかったけど愛梨さんていつもそんなに笑ってるの?」「樂しいから笑っているだけだよ、御飯美味しいし、笑顔じゃ無い理由がみつからないじゃ無い。」満面の笑顔の愛梨の頬を市来君はふわりと撫でた。「素敵だね。愛梨さん。」真っ直ぐな市来君の瞳と指先、そして声に射抜かれた愛梨の身体中は熱くなって顔はトマトみたいだ。同仕様もなく恥ずかしい愛梨は下をむいて水を飲んだ。そんな愛梨を更に愛おしそうに市来君はみつめる。二人の世界はついさっき始まったばかり、そして明日には終了する。
最初のコメントを投稿しよう!