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このままいけば、僕は彼女と親密な関係になれるのだろうと思った。
彼女と初めて出会った春を含め、4回目の春が来た。
高校を出た僕は就職をした。
彼女との関係を続けるため、同じ道を通っていける場所に務めることにした。
初出勤の日、それまでと同じように桜が静かに咲く小道を僕は歩いた。
いつも通り彼女と挨拶をして、今日も1日頑張ろうと考えていた。
珍しく、この道で彼女とすれ違うことがなかった。
この日を境に、彼女とすれ違う頻度は少なくなっていった。
夏になる頃は2日に一度。秋になる頃には4日に一度。
冬になる頃には彼女とすれ違うのは1週間に一度だけになった。
そして再び春が来た。
僕の元にも彼女の元にも、平等に分け隔てなく春が来た。
この春から彼女を見かけることはなくなった。
僕はそれからも毎日毎日、川沿いにあるその小道を通り続けた。
いつか再び彼女に出会えると信じて、僕はその道を通り続けた。
雨の日も晴れの日も。春も夏も秋も冬も。
僕は小道を通り続けた。
彼女を見なくなり、1年が経過した。僕は二十歳になっていた。
まだ僕は桜の咲く川沿いの小道を歩き続けている。
毎日毎日飽きることなく。最近では仕事の無い日も歩くようになった。
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