歪な愛の結末

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 今日この道を彼女が歩いていたのは、生まれた子供を彼女の両親に見せに来たついでだったらしく、またこの場所から、この街自体からいなくなるそうだ。  結局、最後まで彼女の名前は聞かなかった。  聞いてしまったら彼女に固執してしまうと思ったからだ。  僕はもう彼女を忘れ、恋に囚われずに生きるべきなのだ。  最後の最後で、一度だけ彼女の子供を抱っこさせてもらった。  目元が彼女に似ていて、とても可愛らしかった。  後になって考えてみれば、僕が彼女とまともに話をしたのはこの時が最初で最後だった。  赤ん坊を彼女に返し、僕は彼女とその旦那さんに別れを告げた。  彼女は話をしている最中、とても幸せそうだった。 「そうか…彼女は幸せなのか…」  僕は彼女が幸せだと知ることができ、満足だった。   彼女が幸せなら、別に悪い気はしない。  むしろ、彼女が幸せなら僕はそれでいい。  僕は彼女が幸せならそれだけで十分だ、それだけで僕は幸せだ……  …………なんて僕は毛頭思わない。  そもそもだ。  僕は恋の相手が他人に奪われ、それにもかかわらず「相手が幸せなら自分も幸せだ」なんて言う奴の気持ちが理解できない。  恋の相手が他人に奪われているんだぞ?  自分の幸せが叶わない現実を見せつけられ、どうして幸せだなんて言えるんだ。  正気の沙汰じゃ無いな。     
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