終焉のC

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「おかえりなさい、青!」 「ただいま、お母さん」 平日は学校が終わると、スナイパー訓練のために国家ジュニア武装兵団の本拠地に行っていた。 今日も気づけば、午後6時時を回ってしまっている。 「毎日遅くまでご苦労様! ごはん食べた?」 「うん。大丈夫」 「お風呂も沸いてるわよ。今日は、ローズマリーの入浴剤を入れてみたから、身体が温かくなるわよ。今日こそぐっすり熟睡、間違いなしね!」 「そうだね。ありがとう、お母さん」 ボクはただいまのキスをしてから風呂場に向かった。脱衣所につくと、かすかに浴室からローズマリーの香りがしてくる。 (ローズマリーかぁ……いい香り………) お母さんもお父さんも、ボクの眠りが浅いことを心配していた。身体は疲れているはずなのに、熟睡できないとボクが訴え始めたのは、一年ほど前からだった。これ以上心配させたくなくて誰には言っていないけど、ボクが熟睡できていない理由はわかっていた。 ボクは、毎日のように同じ夢を見続けているのだ。 身に着けていたものを脱ぎ捨て、浴室に拡がるローズマリーの薫りを感じながら、ボクはゆっくりとバスタブの中へと片足を入れた。 ーーそして、気付くと目の前には何もない空間が広がっていた。
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