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日常を探す無限の旅路
A「……まだ食べてないよ?」
B「僕、まだ何も言ってませんけど」
A「これで何度めだと思ってるんだい?」
B「あなたが思い出の味に会えることを、僕も待ちわびているんです」
A「それが君にとって何の得になるのか、いい加減教えてほしいね」
B「旅してる時って、どうでもいいことが楽しかったり気になったりすること、ありません?」
A「君のヒマつぶしに私を利用しないでくれたまえよ」
B「思い出の味ひとつのために世界を何回も作り替える方が、よっぽどヒマつぶしに思えます」
A「味にも人間にも興味ない君には、一生理解出来ないだろうね」
B「確かにそこには興味ありません。が、今回の世界はけっこう綺麗なので気にいっています……あの煙を除いてね」
A「君の好みなんて知らないよ。私にとっては、このパンの味があの世界と一緒か──それだけだ」
そして彼女は、大きな口を開けてパンを頬張る。
B「『ありきたり』っていうのが、案外いちばん難しいんですよね」
そのとおり──とでもいうように、彼女は大きく頷いた。
つまり今回も、そういうわけか。
壊すのは簡単だけど、創るのは難しい。
今来たばかりだけど、また出発の準備をしなくてはね……。
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