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それに気づいた下河内主任の目がハートになる。
民野課長は、鴨居に片手を掛け、体は壁に預けたキザなポーズで二人を見つめている。
こんなキザなポーズも、サマになってしまうところが、少し憎らしい。
「か、課長…本気ですかっ!」
私は動揺しながら、慌てて噛み付く。
なんで課長と私のこの関係に、こんなオンナを入れなきゃいけないの?
私たちって、いったい…。
「いいじゃないか。多い方が楽しいだろう」
そう言って民野課長は、人の気も知らないで笑う。
「じゃあ、今日も、仕事終わりに、な?
昨日も愉しんだのに、オレもう我慢できないよ。だから下河内クンも小石川と一緒に来ればいい。こういうもんは人数多いなら多いなりの愉しみ方もある」
民野課長はそう言うと、背中越しに手を振って去って行った。
なんで、こんなことに…。
課長にとって私って、なに?
そもそもなぜ二人のこの関係が発覚したのだろう。
社内ではバレないよう気をつかっていたはずだ。
私が腑に落ちないという顔をしていると、それを嬉しそうに見つめていた下河内主任が、ニヤニヤしながら尋ねた。
「ねえ、貴女、“ドラックストア剛力”って知ってるわよね。あそこのレジ打ってるの、私の母なのよ。いつも沢山買ってくださる我が社の社員がいるってね。首から下げたI.D.カードと、出されるポイントカードの貴女の名前を覚えてて、私に教えてくれたの。“いつもありがとうって言っといて”って。
そしたら貴女、昨日は午後からずっとニヤニヤしてるからピンときて、こっそり後をつけて行ったってわけ」
なんとした不覚。
そんなことから発覚するなんて…。
落ち込む私を見て笑いながら、下河内主任は、“仕事終わりが楽しみだわ”と私の肩を叩くと、スキップせんばかりの勢いで去って行った。
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