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その日の夕方。
「ねえ、凄い!凄いわ課長っ!
こんなに…こんなに…!
ねえ、小石川さんもそう思うでしょ?」
「ああ、凄いだろ、下河内クン。オレも堪らないよ」
興奮する民野課長と下河内主任を冷めた目で見つめながら、私は一人モフモフしていた。
「おい、小石川。早く出せ。“彼女”がお待ちかねだ!」
民野課長は、私のバッグの中からキャットフードを奪い取るようにして手に取ると、“ほーら、たくさん食べろよ”と蕩けるような笑顔で、足元に集まった猫たちに自らの手で餌をやる。
そう。
ここは会社から少し離れたビルの間にある小さな公園。
2ヶ月ほど前の帰り道、ここが猫だまりになっていることに気づいた私が一人猫まみれになって楽しんでいると、公園の反対側に、一人猫と戯れる紳士がいるのに気づいた。
「民野課長っ?」
それ以来、ここで一緒に猫と戯れるのが二人の秘密だった。
そう。二人だけの秘密だったのに!
プンプンしている私の気持ちを知ってか知らずか、民野課長は笑顔ではしゃぐ。
「小石川、猫好き仲間が増えて楽しいなっ!」
私は「へへっ」と苦笑いするしかなかった。
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