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店を出て、しばらくは同じ道を一緒に歩いていた。たまたま行く方向が同じだからと最もらしいことを言って機会を伺っていた。
大通りを外れ、人気のない道に着いたとき、少年は足を止めた。
「何で、俺が犯人じゃないって分かったんですか? 店にいた人全員が疑っていたのに……」
ずっと疑問に思っていたことを尋ねると、事件を解決した探偵少女は店の人からお礼に貰ったホットドッグをモグモグ、ゴクンと飲み込み、振り返った。
「だって、君が犯人なわけがないよ。君は強盗殺人犯なんかじゃなくって、小銭泥棒なんだからね」
当たり前のように言い切る彼女に、少年は頭を木づちで叩かれた気がした。
「え……、何を言ってるんですか? 冗談にしてはタチが悪いですよ」
「冗談じゃないよ。君はあの店だけじゃなく他の店でも同等のことをしていたでしょ? レジに並ぶお客さんから”わざとお金を落とさせて”拾ってあげる、当たりの良い笑みができる君だからこそできる手口だよね」
無言になる少年に、少女は二ッと白い歯を見せて笑った。
「盗んだ金額は、このホットドッグすら買えない極僅かなもの。だから、盗まれた方も気付かない、文字通り迷宮入りになる案件だ 」
頬に赤いソースが付けたままドヤ顔する探偵少女に、少年は何か言い返そうと口を開閉させて、止めた。
彼女には何を言っても意味がない。
真実が視えている探偵少女の瞳を見てそう思ってしまった。
「何故、分かったんですか?」
「う~ん、そんふぁどふぁんふぁんふぁよって、……ゴクン。そんなの簡単だよって言いたいけどさ、前に君は私のお姉ちゃんの店で同じことをしていたからね。あの時は確証がなかったけど、今回はたまたまパン屋でおやつを買おうとしたら君の姿を見掛けたから、本当に犯行するかずっと見張っていたんだよ。因みにお姉ちゃんのお店は街角の洋菓子屋さんだよ」
種明かしをする探偵少女に、笑ってしまいそうになる。
どうやら自分は思った以上に迂闊だったらしい。
(街角の洋菓子屋、2週間前のことだな)
あの時から、自分は疑われていたというのなら、疑問がもう一つできる。
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