0人が本棚に入れています
本棚に追加
そして気づけば夜も遅い時間になり、そろそろ寝ようということで、Dさんはソファーで横になった。
電気が消され、部屋が真っ暗になった。
少し離れたところで、兄が布団を敷いて横になっている。
時計の針が進む音だけが、狭い部屋に響く。
こうして隣り合わせで眠るなんて、子供時代に戻ったみたいだな、とDさんはつい昔を懐かしんだ。
そして真っ暗闇な天井を眺めながら、兄に改めて尋ねてみたという。
「ねえ、なんで東京に来ることになったの? 地元から離れるつもりないって昔から言ってたじ
ゃん」
「お前に、会うためだよ」
まだ酔いが冷めていないのか、柄にもないことを言う。
「でも、兄貴まで家出たら、母さんと父さん、寂しいだろうな。反対されなかった?」
「ああ」
暗がりから、返事がくる。
「でも、口には出さないだけだと思うな。・・・・・・そうだ、来月の母さんの誕生日、二人で何かプレゼントでも贈ろうよ」
「そうだな」
「花束包んでさ。きっと喜ぶと思うよ」
「そうだな」
「メッセージカードなんかも添えてみるのもいいよね」
「そうだなあああああああ」
喉を潰したような声が、隣から返ってきた。
Dさんは一瞬、身をかたくした。
なんだいまのは。
「兄ちゃん?」
最初のコメントを投稿しよう!