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さいしょはグー じゃんけんポン……
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「ねぇ、さっきからずっとやってるじゃん、そろそろ代わってよ」
家に一つしかないテレビゲーム機。
弟のユウヒがずーっと遊んでた。
私は違うソフトのゲームがやりたいから順番待ち。
だけど、どれだけ待っても変わってくれない。
「ねえ、私もゲームしたいんだけど」
「このステージクリアしたら終わるから」
そう言われて、しょうがないと溜息をつき、私は本を読みながら待つ。
ステージクリアの音がしてやっと出来る、そう思って本に栞を挟んで、私はゲームのコントローラーちょうだいと手を伸ばした。
だけどユウヒは変わってくれない。
「ねえ、終わったでしょ」
「次のステージ始まっちゃったからもう少し!」
テレビの画面を見ればゲームは進んでいる。
私は溜息をつき、ついさっき、栞を挟んだところから本を読んで待つ。
「よしっ、クリアー」
「はい、じゃあ私と代わってよ」
「えー、いい所まで来たから、もう少し!」
ユウヒはそう言って、ゲームをさらに続けようとした。交代してと最初に言ってからもう30分は経っている。
我慢の限界だ。
「いい加減にしろ!代わってよ!」
ユウヒの手から無理やりコントローラーを奪った。
ちゃんとセーブはしてから、ソフトを抜いてやったのは褒めて欲しい。
「やめろよ!」
「っ!!」
後ろからグッと髪を引っ張られる。
「痛い!痛いってば!」
「俺まだやってんじゃん!何すんだよ!」
「代わってってずっと言ってたじゃん!」
私だって負けじとユウヒの服に掴みかかった。
私たちの喧嘩は始まってしまえば、もう取っ組み合いだ。
髪をグイグイ引っ張られて痛いし、手が出るし、足が出る。
「まだ俺がやってるのにゲーム消すことないじゃん!」
「セーブしてやったでしよ!代わってって言ってるのに代わらない方が悪い!」
お互いに頬をつねる。髪を引っ張る。
だけど、本当はこうなればこの喧嘩に私が勝てないって分かっていた。
さいしょはぐーで、始まる喧嘩。
じゃんけん、ぽん、私の言ってることの方が正しいはずなのに。
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