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老婦人は「しばらくここに居なさい。氏神様が守ってくれるわ」とよくわからないことを言います。いったいどういうことだろうと聞き返そうとするも、老婦人の姿は見えません。ふと空を見ると紫色。もっと暗い色だと思ったのに変だなと首を傾げたとき、急にあたりが真っ暗になりました。
黒い雲が現れて土砂降りの雨。
夕立ちだと思い、私は神社の屋根がある場所で雨宿りをしました。
おそらく、老婦人が行ったことはこのことだろうと、その時は思ったのです。まもなく雨はやみました。
家へ帰る道を歩くと自分の向かう先が騒がしいことに気づきます。
どういうことだろう? そう思い、濡れた地面をかけました。
その時私が見たものは真っ黒に萌えた家。あ、私の家ではありません。隣の家です。しかし、私の家にも火が燃え移っていました。ちょうど、子供部屋のあたりの壁が真っ黒こげ。
もし、私が早く言えに帰っていたら……?
そういう想像はやめましょう。考えても仕方のないことです。
とても不思議な話でしょう?
ところであの老婦人は誰だったのか? 気になりますか?
実は私にもよくわからないのです。彼女のことは老婦人とだけ覚えているのですが。
……ああ、そういえば整った顔立ちだなあとは思いましたね。
今思い出したのですが、祖父はとうの昔に亡くなった祖母のことを、この世で一番の美人だと言っていたらしいです。生前よくそんな話を聞きました。
あいにく、私が生まれる前に祖母はなくなってしまったので、どんな顔なのか、不鮮明な白黒写真でしかわからないのですが……。
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