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 ハンバーグを食べる予定だったゴロウは、結局チャーハンを注文した。メニュー写真を撮った写真家がハンバーグよりチャーハンに気持ち込め撮影したからなのか、何なのか知らないが、チャーハンのほうが美味しそうだったのである。  食べながら、山頂の旅館で何をするかを話し合った。  四人は小学校と中学校時代の同級生である。  四人とも大学生であり、村を出て一人暮らしをしている。今は夏期休暇で帰省中だ。  案外山頂のほうには行ったことがない、ということに思い当たり、では行ってみようとなった。ついでに宿泊してみようと。  山頂はちょっとした観光地である。お店もあって栄えている。山単位でみると、彼らの集落と同じひと山に属するが、山道の途中から隣の県になるから、近所なのに行くことが少なかったのだ。県境というのは、とくに幼少期においては保護者無しでまたぐことのできない結界のようなものだった。  チェックインの時刻は十五時から十六時で伝えてあるが、もう二十時半になっている。金銭感覚も貞操も乱れておらず誰かの悪口も言わない彼らだが生活リズムだけは乱れに乱れており、ランチタイムに集合する約束だったのに四人中三人が夕方まで寝坊してしまい、こんな時間になっている。  四人はそれぞれの料理を食べ終えると満腹になった。  エツオが最後に水を飲み干した。 「では、行きますか」  ゴロウが言った。  会計を済ませた四人は店を出て、車に乗り込んだ。  またゴロウが運転をする。  一同、無表情であり、沈黙している。誰も口を開かない。コップが五つ出されたことには、誰も触れなかった。ゴロウは本当は手に汗を握っている。そしてトンネルがやってくる。  短いトンネルだ、十秒ほどしかかからない。すぐに車は抜けた。  ゴロウはミラー越しに、後部座席を見る。後部座席の中央には、タカシとトモコにはさまれるかたちで、新しい人間が出現していた。うわさ通りに。  タカシは自分のとなりに出現した幽霊であろう青年をちらちら見た。  トモコの警戒したとおり、やはり車内の人数は四人から五人になってしまったのだった。
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