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もし僕が魔法を使えるならその魔法を毎日こいつにかけてやりたいと思ったことは言わないでおこう。
「僕、一回だけその魔法かけたことあるんだよ。」
「へぇ、誰に?」
興味本位で何でも聞いてはいけない。この時の僕はそれに気づいていなかった。気づいていたら、僕がどうなってしまったのか流石の僕でも分かっていたはずなのだ。
「いや、それがね、全然知らない人にかけちゃったんだよね。」
「…何でだよ。」
「腹が立って。」
「だから何にだよ。その人になんの恨みがあったんだ…。」
僕は全力でその人に同情した。その人はきっとその日とても気分が悪い一日を過ごしたであろう、と。
「高校登校日初日の前日にね、スーパーに行ったんだよ。その時僕の好きな人気なお菓子がね、ラスト一個だったんだけど、それをその人に取られて…。」
「そんなことで呪いをかけたのか。その人に同情するよ。」
「呪いじゃないし、魔法だし。ってそんなことじゃないよ!本当に美味しいんだって。君は知らないかもしれないけどね、駅前の道の裏路地にある少し怪しい雰囲気のあのスーパーにはね、週に一回見かければいい方っていう伝説のお菓子"でんせつである"があるんだよ。そのお菓子は和菓子のようで洋菓子のようで…、」
僕はその彼の話を聞いているうちに具合が悪くなっていくのがよくわかった。僕は力が抜けたように俯いて項垂れる。
「…って、どうしたの?」
僕の異変に気づいた谷崎は、話をとめ僕を見つめた。
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