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高校登校日初日、僕は知りました。
「おいよぉ、にーちゃん、金貸してくれや。」
あまりに背が低い男だと不良に絡まれるんですね。正直漫画の世界だけだと思ってました。
「…持ってません。」
「はぁ?持ってません、じゃねぇよ。」
目の前の男をチラリと見る。金髪にたくさんのピアス、派手な色のパーカーにパンツが見えそうなほど下げてあるズボン。いや既に赤色のが見えている。
お前はあれか?パンツを見せたいのか?
「だから、持ってませんって…。僕、今日から登校でお金なんて親から渡されてませんし…。」
僕は腹が立っていた。何しろ朝は目覚まし時計が壊れてて電車に乗りそびれそうになるし、急いでいる中おじいさんに道を聞かれるし、転んだ女の子に絆創膏をあげて泣き止ませるし…。
でもやはり口答えしたのは不正解だったようで。
「はあ?てめぇ何言ってんだよ!」
胸ぐらをがしりと掴まれ、男が右手の拳を握りしめるのが見える。僕は溜め息を吐き、それを肘で受け止めようとした時、突如僕の首元が楽になった。
「あれ?」
「君、逃げて!」
どこからか声がしたので、取り敢えず男の傍から離れようと走り出す。背は低いが、運動神経はいい僕は少し男から離れてから振り返る。
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