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「へあ?」
僕は思わず変な声を出してしまったのである。さっきまで僕に絡んでいた男が次は別の男子高校生に絡んでいたのである。しかも彼、僕の顔を見てぷるぷる震えているじゃあないか。明らかに弱腰の男である。折角誰かに助けて貰ったのに自分から首を突っ込むのも可笑しい話なのは重々承知であった。
「いってええええ!!!」
僕は自分の鞄を一周ぐるんと振り回しそのまま金髪の男の後頭部に食らわせると、ヘタレ男の手を引いた。
「ほら!走るよ!」
僕は助けるべきじゃあなかったんだ。自分が助かったならそれでいいじゃないか。自分が愚かだったことを知った時にはもう時すでに遅しであった。
「おっっっまえ、何でそんな足遅いの!?」
口が悪いのも自分でわかっているから直そうとしているが、これは仕方ない。ヘタレ男の足が有り得ない程に遅いのである。
「へあっ…すみまっ…へっ…せっ…はぁく…」
悪いが何を言っているのかさっぱりである。とにかくこのままではまずい。既に金髪の男はすぐそこまで迫っていた。というか、金髪の男も金髪の男である。ズボンを下げすぎているせいかそれともただの短足なのか、おそらく前者だがひょこひょことした間抜けな走り方である。
「何あの走り方、だっさ……」
ボソリと呟く僕の声が聞こえたのだろう。ヘタレ男が吹き出したのか息が上がってそんな声が出たのかわからない声を出した。
「ぶおっふぁっ!」
「そんなんで笑わなくていいから、早く走ってくれ……」
僕は溜め息を吐きながら、ヘタレ男を急かし立てるように背中を叩いた。
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