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今日の僕は失敗してばかりだった。ヘタレ男の背中を押した瞬間、彼の背中が前のめりになり倒れる。
「ちょっ、大丈夫?」
「だっ……だいひょうぶ…です…」
「ひっ…」
頭を上げた彼の顔を見て、僕は思わず声を上げた。もうもはやオカルトチックな鼻血だらけの顔である。どれだけこの男は鈍臭いのだろうか。
「ひぃっはあっ…やっと…おいついたっぞっ!」
背後にはこれまた酷い息切れの金髪の男が立っていた。お前らどれだけ運動不足なんだ。
暴力は個人的に好きではないが、仕方ない。正当防衛である。僕は腰をおとし、金髪の男の攻撃に備える。
「ダメ!彼に手を出さないで!」
「「は?」」
構えた僕の目の前に立ったのはヘタレ男であった。
「いや、お前じゃ相手にならないだろ。」
「そ、そうだぞ?俺は強いぞ?」
何故か金髪の男まで心配したようにおろおろし始めた。原因はヘタレ男の顔だろう。血だらけだからな。
「ぼ、僕は、君に対抗できる、から!」
その言葉に僕も金髪の男も呆れたような顔になる。
「…そんなに言うなら任せるぞ?」
「だ、大丈夫!」
そう彼は言い張ると、両手を金髪の男に向かって突き出した。金髪の男は何を警戒したのか少しだけ遠のく。だが、ヘタレ男は動く気配はなかった。
約二十秒そのままの状態のあと、僕は我慢しきれずに声をかける。
「…悪い、何をしている?」
「…魔法を出そうとしているんだけど、あれ?何で出ないんだろう?」
僕は首をギギギと回して、金髪の男に向き直る。
「なあ。」
「…何だ?」
「こいつは何を言っているんだ。」
「…悪い、わからん。」
結果を話そう。
僕は金髪の男と和解した。
後に僕はこのヘタレ男との出会いを、人生最凶の出会いと名付けることになる。
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