人の話を聞かない彼女と頷いてばかりのさとーくん

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 とたとたと軽い足どりで廊下を抜けてキッチンへと向かう。シンクに食材が入っているらしいビニール袋を置くと、どさりと倒れた。ああ、また雑に詰めたな。 「大学は大丈夫なの?」 「学校行ったら休講だったの。午後の授業には戻るよ。学校に行かなくてやばいのはさとーくんでしょ」  ふん、と鼻息荒くする彼女の家は大学から遠く、僕の家から近い。それに早朝から駅中のパン屋でアルバイトをしている働き者なので、空いた時間に実家へと帰るより僕の家に来ている方が断然と効率が良いのだろう。ご飯を作るぐらいがちょうど良いってわけで。  そうなると帰れとも言いにくい。  ぼやけた思考でどうするもんかと唸っている僕のことなど意に介さずに、彼女は乱雑に購入物をシンクの上に並べていく。うどんの麺に卵に玉ねぎ。ラインナップから察するに今日のお昼は卵とじのうどんになるのだろうか。ではなく。  彼女がわが者顔でわが家に居ることに対して異議を唱えなければ。 「コッチに来た理由は分かったけど、ご飯まで作らなくていいよ」 「でもお腹空いちゃったもん」  僕のだけじゃなくて自分の分も作るつもりなのか。 「風邪移るよ、試験前でしょ」 「大丈夫、私じょうぶだから!」  満面の笑みを向けられて頭痛が増す。こんな容体で彼女の相手をしたくなかったから来ないでと言っておいたのに。 「……せめてマスクしたら」     
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