人の話を聞かない彼女と頷いてばかりのさとーくん

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 せめて父さんが居たら、と思ったところで、彼女が家に来るたびに嬉しそうに迎え入れている父の顔が浮かんできた。速攻で頭の中で振り払った。居ない人のことを考えてもしようがない、と目を瞑る。  ああ、どうやって別れを切り出したものか。    ***  僕が彼女と出会ったのは高校の友人主催の合コンだった。  大学一年生の冬休み、久しぶりに集まった同じ高校に通っていた面々のほとんどが地元に住んでいる者ばかりだった。そんな中、都内へと引っ越したやつが自慢げに話したのが、彼女が出来たということだった。 「同じサークルの子でさ、地方出身ってことも馬鹿にしない良い子なんだよ。しかもかわいい! こんな半端な街じゃ出会えないぞ!!」  僕らが住む街はいわゆるベッドタウンと言われるところで、人口はそれなりに居て都心へのアクセスが良い代わりに街自体には何の特色も無い。地味な街だ。 暮らしている街によって彼女の有無など大差ないように思うが、地元に居座り続けている他のメンバーは宣戦布告と取ったのか、そいつが彼女と過ごす時間を大事にしたいからと早々に独り暮らしをしている都会へと戻ってから、 「俺らも負けてられねーぞ!」  と、謎の団結力を見せた。  そしてその中のひとりが姉のツテを頼って合コンを開いたのだ。同級生の姉は近くの大学に通っているとのことで、その大学の人たちが来てくれると言う。     
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