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翌日。少しだけ早く会議室に着くと、セールスの新條さんが一人でプロジェクターのセッティングをしていた。
「お疲れ様です」
「ああ、お疲れ様」
「何かお手伝いしましょうか?」
「いや、もうすぐ終わるから大丈夫だ」
ドーナツ状に並べられた長机。プロジェクターが映し出すパワーポイントのタイトルは
『2019年度 GWフェアプロジェクト』となっている。
「ああ……やっぱり」
私は大きく嘆息した。セールスと一緒の会議だから予想はしていたけれど。
「やっぱりって?」
新條さんは手を止め振り返った。
「今日の会議、ショールームフェアの話なんですね」
私の言葉に目を眇め、中指で眼鏡のブリッジを押し上げる。
営業一課のセールス、新條さん。
前髪を半分だけ下ろしサイドを後ろに流した黒髪と、男の人にしては色の白い肌。シルバーフレームの眼鏡の奥には吊り上がった細い瞳があり、真っ直ぐ通った鼻筋と薄い唇も相まって平安貴族のような雰囲気を醸し出している。アドバイザーとセールスは基本的に絡みが少ないので、彼の人となりは分からないけれど、淡々と仕事をこなしていそうなイメージだ。仕事とプライベートはきっちり分けてます、みたいな。
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