あなたと平穏な毎日を

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あなたと平穏な毎日を

 三月十一日。忙しい土日を終え少しだけホッとできる月曜日。午後一組目の接客を終えバックヤードでお茶を飲んでいると、リーダーの相田さんに「明日セールス会議があるから後藤さんも出席してね」と声を掛けられた。 「私がですか?」 「そう。十三時から一時間の予定。二階の第三会議室」  相田さんはキーボードを打つ手を止め、私の顔を見てサラリと言う。 「十三時は新規のお客様が入っていますけど」 「高井さん辺りに替わって貰って」 「はあ……」  相田さんは社歴十年以上のベテランアドバイザーだ。美人だけれど口調もキツイ。  私はベストのポケットからメモ帳を取り出し『12日 13時 第3会議室』と書き込んだ。 「忘れないでね」 「はい。……それで何の会議でしょう?」 「行けば分かるわ」  相田さんはまたディスプレイに向き直り、パチパチとキーボードを打ち始めた。そんな相田さんの背中から視線を外し、もう一度ペットボトルのキャップを開ける。 (セールス会議って……嫌な予感しかしないんだけど) 「後藤さん」  ぼんやりと考えていると、ショールーム入り口からひょっこりと顔を出した今川ちゃんに声を掛けられた。 「新規なんですけど出れますか?」 「分かったわ。今行く」 「お願いします。三番テーブル、ステイです」  今川ちゃんはにっこりと笑って戻っていった。笑顔の可愛い新人アドバイザーだ。  私はお茶を一口飲んで立ち上がる。 (面倒な仕事じゃありませんように)  鏡に映った自分の顔に祈るようにしてから、接客に向かった。
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