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当時、私はいわゆる落ちこぼれでした。勉強に全くついていけず、他のクラスの落ちこぼれ仲間と一緒に授業を抜け出して、寮でテレビゲームをしたり、街まで遊びに行ったり、そんなことばかりしていました。
ただ、寮にも常駐の管理人がいて、さぼっているとすぐに先生に報告されるし、お金もなかったので、そんなに頻繁に遊びに出れるわけでもありません。
どこかいいサボり場がないかと思っていた時に、私たちが見つけたのが地下教室でした。
授業が行われている校舎から少し離れていて、先生の出入りもなく、何より幽霊の噂で気味悪がって近寄る生徒もいないので、行き場のない落ちこぼれには都合のよい場所でした。
私は不良仲間二人ー矢野と中平と言いましたーと地下教室のうちの1つを自分たちの部屋に決め、ゲーム機やら雑誌やらを持ち込み、秘密基地気分で好き勝手に使っていました。
最初こそ、地下教室の陰湿な雰囲気に気味悪さも感じていたのですが、あまりに居心地がよく、そのうち幽霊が出るなんてことはほとんど意識しなくなっていました。
そんなある日、私たち3人が地下教室でいつものようにゲームに熱中していると、コン、コンッと扉をたたく音がしました。
私たちは驚いて反射的にゲーム機を自分たちの背後に隠し、音のした扉の方を振り向きました。
教室の扉は閉まっていましたが、その扉についた小さな窓ごしに人影が見えました。
ただ、廊下には電気がついていないので、薄暗くてはっきりは見えません。
先生ならすぐに大声を上げて怒鳴りこんでくるはずなのですが、窓の向こうの影はそこにじっと佇んでいました。
私は冷たい汗が背中を流れるのを感じ、他の2人と顔を見合わせました。
その時、ガラガラッと大きな音を立てて扉が勢いよく開きました。
あまりに急だったので、私たち3人は声を上げて座っていた椅子から転げ落ち、腰を抜かました。
その時、あはははは!と扉から笑い声がして、ショートカットで小柄の可愛らしい女子生徒が教室に入って来ました。
女子生徒は私たちの前まで来て「幽霊だと思いました?」と言って声を上げて笑いました。
これが私たちと早紀の最初の出会いでした。
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