かわって

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 わたしのお父さんは厳しい。  前は、そんなでもなかった。洗濯物をとり込むのを忘れてるって怒鳴ったりしなかったし、宿題にとりかかるのが遅いって叩いたりしなかった。  わたしが二年生のときにお母さんが死んでしまってから、だんだん今みたいになった。  怒鳴られると怖いし、叩かれたら痛い。やめて欲しいけど、わたしがやらなきゃならないことを忘れてたり後回しにしてたりするから、お父さんは怒るのだ。  悪いのは自分なんだから、いい子にならなきゃ。  毎晩、布団の中で小さくなって、そう念じながら眠る。  なのに、四年生になってもわたしはまだ、いい子になれない。  火曜日のことだった。授業が終わって帰る準備をしていると、あれっと声が出た。理科のノートがない。  どうしたのー、と友達がこちらを見るなか、顔から血の気が引いていくのが分かった。  理科は宿題が出ている。ノートがないとできない。  毎日八時に、お父さんからの宿題チェックがある。できてないと、怒られて叩かれる。  泣きそうになっていたらしい。友達が何人か、驚いた様子で集まってきていた。  慌てて誤魔化しながら、でも必死で、理科のノートがないのを話す。友達はなあんだ、と少し笑ったものの、 「理科、今日は校庭でやったよね。どっかに忘れたとか?」 「そうかも。教科書とノート、みんな適当なところに置いたりしたじゃん、誰かが自分のと一緒に持って帰ったりもするかも」  口々に言って、探してみようと励ましてくれた。
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