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車は高架の上をどんどん登って行く。橋は2本なのではなかった。長い長いUの字状になっているせいで、行き交う2本の道のように見えたのだった。
登りきると山頂のすぐ下にトンネルがあり、道はその中へ続いている。その上にちらほらと動く人影が見えた。トンネルを抜けたところで、亜矢がスピードを落とし、車を路肩に寄せる。振返ると、さきほど通ったトンネルの上に続く歩道があった。
「ここがニライ橋とカナイ橋なのかな。それとも、そのどっちかか。みんなあっちへ歩いていくね」
亜矢は車を止めたくせに不安そうだ。
「うーん、それにしては、あんまり混んでないね。みんな間違えて来ちゃったんじゃないの?」
月斗が笑った。止まっている車のナンバーから個人レンタカーばかりのようだった。不慣れな旅人たちが迷った挙句、辿り着いてうろついている、その可能性は十分にあった。
「降りてみれば。違ってもいいよ、ずいぶん運転してきたし」
と桃が言った。
「ねえねえ。ニライ・カナイは黄泉の国だって。あの世ってことみたい」
私がスマホの画面を読み上げる。
歩道を歩くとすぐにトンネルの上へ行けるようになっていた。
車から降りると、びゅうっと音を立てて、海の遠くから風が吹き付ける。
「飛ばされそう!」
桃が帽子を押さえた。月斗のストールも、ぶるぶると強くはためいている。
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